「新しいことに挑戦すべきだ」
ぽつり、
呟いてすぐがもぞっと寝返りを打って膝の上からずり落ちた。
::万華鏡::
付き合い始めの頃 傷付けたくないから二人きりにならないようなるべく外で会っていた。
現世に下りてからは四六時中共に行動するようになり
更に周りの連中が変な気を使って 今だって全員出払っている中でと留守番だ。
二人きりの時間が増えると自然と機会も増える。
距離は格段に縮まったけれどそれでももっともっとと欲が出てきて悶々。
寝惚けながら這い上がろうとして
まだ目の開いていない子犬か子猫みたいな動きをする。
「どこ行くつもりだよ‥こっちだ」
手を貸すとやっとしっくり来る場所を見つけたようだ。
「‥‥みんなは‥?」
「まだ帰ってきてねえ」
「そう 遅いね‥ 気使わなくていいのにね?」
「いや あいつらは面白がってるだけだろ」
が笑う。
その笑顔も仕草も全て子供っぽいのにしっかりと女だから却って怖い。
真子の言葉が頭を過ぎる。
「仲良いんはええことやけど子供作るんちゃうぞ も戦力なんやからなー」
へらへらと笑いながらそんなことを云い放った。
思い出すだけでも苛つく。
一発殴っておくべきだったかもしれない。
「? 拳西ほっぺ赤いよ」
「!」
の耳元に口を寄せる。
誰のせいだと思ってるんだ、と。
そのまま耳たぶに唇で触れると途端にまったりしていた空気が一変しての身体が固まる。
誰も居ない部屋、そして恐らく当分誰も帰ってこないであろう部屋。
二回はできるなと腹案する。
の喉から上擦った声が漏れる。
「‥怖い顔して何で急にそういうことするかな‥‥」
「怖い顔で悪かったな 生まれつきだ」
「あぁ 嘘!嘘! 怒らないで」
上体を起こし軽く口付けて機嫌を取ってくるから噛み付くように口付け返すとくぐもった声が口腔に溶けていく。
睫毛越しに見える表情に同じものは一つもない。
常に新しい表情を魅せてくれるそれは例えるなら万華鏡のようで。
「んん 痛い、」
八の字になった眉を見て慌てて腕の力を緩める。
これでもかなり加減しているつもりなのに女の扱いは難しい。
ためらいそうになる自分に やれば出来る!傷付けずに出来る!と云い聞かせる。
数分後。
「け 拳西 ちょっとまだ痛い‥」
「そうか? じゃァその痛みが快感に変わるまでやってみっか」
「?!」
大丈夫、ちゃんと出来ている、はず。
終
「君の鳴く場所」さんの第2回企画に投稿させていただきました。(お題提供「天球映写機様」さん)