藤堂六席視点--- えぐえぐと泣きじゃくり、かゆいよう!と腕をカリカリと掻き毟る幼いは どうやらこの季節がもっとも苦手らしい。 乾いた二の腕には所々に掻き毟った痕があり、ああこれは痛そうだなと腕を掴んで様子を 見てやろうと思うものの・・・・あっさりとその役目は此方に向かって来た六車隊長に譲ることになる。 「何やってんだよ、お前は・・・・ったく」 「ううう・・・・六車隊長っ・・・グスグス」 呆れた表情で、けれどもやはり心配なのかの隣に腰掛ける六車隊長は 小さな手をぎゅうと握り締め、「チッ・・・・仕方無えな・・・・薬塗ってやるよ」と袴から何かを取り出した。 恐らく現世で買ったのだろうか?見たことのない外装には『手荒れクリーム』とだけ書いてある。 勿論それに反応したのは俺だけでなく幼い もその中に含まれている訳で 「うわあ・・・これ!現世のすんごいクリーム!」と先程まで泣きじゃくっていた表情が一変 至極嬉しそうに目をキラキラと輝かせる変貌ぶりを見せる。 そんなに凄い薬なのだろうか? いや・・・そんなコトより隊長が『手荒れクリーム』とやらを持っているコトの方が意外過ぎて、俺は俺で目が点状態。 元来、現世の風潮が染み渡る瀞霊廷では近年、男で化粧水を使う者が増えているのは知っている。 が、まかり間違っても自隊の六車隊長がその様な類のモノを好き好んで使うはずが無く 今、隊長の手に納まっている『手荒れクリーム』とやらもそうだ。 隊長が使う訳が無いし、隊長がわざわざ隊員の為にソレを常備するとは考えにくい。 ということは、考えられるコトはただ1つ。 「さっさと腕出しな、塗ってやっから」 「あわわ・・・自分で塗れますよう!」 「はっ・・・・お前が塗ったら、零すに決まってんだろーが」 「ううう・・・酷いですよう!」 ぷくーと頬を膨らまし、僅かな抵抗を見せる の両腕を難なく片手で黙らせ「・・・・良いから黙って見てろ」と溜息混じりに苦笑する隊長は、多分幼い の為にソレを買ったのだろう。 銀杏が山吹色に変わる 季節の変わり目を境に、 が四番隊へ向かう姿は度々目撃していたし、その姿を遠目から複雑そうな表情で見つめていた六車隊長もまた同時に確認している。 好いた女に何かをしてやりたい・・というのは誰でも思うコトだとは認識していたが、 隊長が の為に現世に向かったと知った今。 六車隊長もその中に括られるのは正直意外だった。 「ひぇえ・・・冷たいー冷たいよう」 「ピーピー騒ぐんじゃねえ!直ぐ終わんだろーが!」 「うぇえん・・・」 けれども、隊長に怒られ ちっこい体を丸め込み泣きじゃくる には、 当分隊長の想いは通じなさそうだな・・・・。 不器用な手付き・・・というよりは乱暴な手付きで幼い の腕に乳白色のクリームを塗りたくる隊長の仕草は、少々 には刺激が強すぎるようで。 目に涙をめいっぱい溜め込む に同情しつつ、 『隊長がお前の為に、わざわざ現世まで薬を買いに行ったんだぞ!』という事実は、 そのうち隊長の居ない時にでも に教えてやろうと決心する俺が居るのであった。 終 ※駄文ですみません・・・・ガクッ。 閲覧して頂きありがとうございました! 配布元:Cantabile ed Espressivo様 |